Works

実績

B’s・行善寺(佛子園本部2期工事)

カテゴリー 福祉施設
所在地 石川県白山市
延床面積 2期計画 2180㎡ (1期計画 2525㎡ 合計4705㎡)
工事種別 増築
構造 S造
階数 2階
竣工 2016年9月
受賞歴
グッドデザイン賞
2017年度ベスト100 特別賞[地域づくり]
石川県デザイン展
第44回 北陸放送株式会社社長賞
石川広告景観賞
第30回 県知事賞
日事連建築賞
2018 日事連建築賞優秀賞
医療福祉建築賞
医療福祉建築賞2018
「ごちゃ混ぜ」の建築・街

石川県白山市の住宅地に立地する社会福祉法人佛子園の本部施設である。
運営法人が掲げる本事業のコンセプトは以下の3点にある。
1. 街づくりの拠点、住民自治の拠点整備
住民自治とは、地域内の課題解決をその地域の住民自らが考え実施していくことであり、それによって住民が街への愛着や誇りを持ち、住民同士のつながりを生むことを目指している。
2. ウェルネスを通じた健康促進事業
ウェルネスとは総合的な健康促進施設であり、身体面だけでなく、生活全般における健康面のサポートを行うものである。本計画においては、ランニングマシンなどの各種器具がそろうジム、ダンスなどの講座が行われるスタジオ、杉板天井が特徴的な屋内プールを配置している。
3. あらゆる人が集まりつながる駆け込み寺
 障がい者だけではなく、健常者も大人も子供もだれもが分け隔てなく集まることのできる場所を創る。
特に3つ目のコンセプトは運営法人の理念の最も根幹的なものであり、「ごちゃ混ぜ」という言葉を使って表現されている。
この「ごちゃ混ぜ」のコンセプトは多種多様な機能を並列的に配置した平面計画に表れている。
2015年4月に完成した1期計画では、法人の母体でもある既設の「行善寺」を取り囲むように温泉、食事処(蕎麦屋)、高齢者デイサービス、障がい者ショートステイ、生活介護などの機能を配置した。2期計画では、ウェルネス、住民自治室、保育園、内科クリニック、フラワーショップ、オフィスなどの機能を中庭を囲むように配置している。これらの機能全体が障がい者の就労支援の場となっていることも大きな特徴である。
これらの複数の異なる機能は互いにオープンな関係であり、明確な境界を持たずに隣接し、混ざり合っている。様々な人が様々な場所を行き交い、そこで交流が生まれている。
例えば、中庭では障害を持つ子もそうでない子も自由に遊びまわり、その様子をカフェでビールを飲みながら眺める人がいたり、子どもたちの声はオフィスやウェルネスにも届いてくる。住民自治室は地域住民が自由に利用できる場であるが、法人職員のフリーアドレスオフィスでもあり、日常的な交流が生まれている。温泉施設は地域住民に無料開放されており、隣接する食事処と合わせて、住民たちの憩いの場となっている。そこでは高齢者や障がい者から子どもまでが「ごちゃ混ぜ」の日常を楽しんでおり、賑やかな街のような風景が生まれている。
その賑わいは「交流人口」という数字にも表れている。2016年10月のグランドオープン以降、一か月あたりの交流人口は2万3千人を超えている。特筆すべき点は、そのうち約半数は福祉以外の目的で訪れているということである。温泉やウェルネスを中心にこの場所が地域の人々に利用され、地域の核となりつつあることを読み取ることができる。
さらに、敷地周辺には法人が持つ既設の障がい者グループホームや将来建設予定のサービス付き高齢者住宅を点在させる計画が進行中であり、地域全体での賑わいの創出を目指している。

この計画は人口減少化時代における地方創生の一つのモデルに成り得ると考えている。
近代においては明確なゾーニングによって合理的に建築も都市もつくられてきたが、人口減少・高齢化の進む地方都市においてはその手法は有効ではないと考えている。
都市部のように商業の力だけで街を盛り上げることは地方都市には困難であるし、特定の世代をターゲットにしたかつてのニュータウンのような街づくりは高齢化という問題に直面している。
地方都市において、ある特定の機能や世代の力だけでは現状を打開することは難しい。
また、我々はこの計画を通して、異なる機能や世代が交わる部分にこそ豊かさや楽しさ、賑わいが生まれることを学んできた。
複数の機能が隣接して混ざり合い、様々な人々がわけ隔てなく集うことのできる多様性を持った「ごちゃ混ぜ」の建築・街が失われつつある賑わいや豊かさを取り戻すための鍵になるのではないかと考えている。
「ごちゃ混ぜ」の建築・街

石川県白山市の住宅地に立地する社会福祉法人佛子園の本部施設である。
運営法人が掲げる本事業のコンセプトは以下の3点にある。
1. 街づくりの拠点、住民自治の拠点整備
住民自治とは、地域内の課題解決をその地域の住民自らが考え実施していくことであり、それによって住民が街への愛着や誇りを持ち、住民同士のつながりを生むことを目指している。
2. ウェルネスを通じた健康促進事業
ウェルネスとは総合的な健康促進施設であり、身体面だけでなく、生活全般における健康面のサポートを行うものである。本計画においては、ランニングマシンなどの各種器具がそろうジム、ダンスなどの講座が行われるスタジオ、杉板天井が特徴的な屋内プールを配置している。
3. あらゆる人が集まりつながる駆け込み寺
 障がい者だけではなく、健常者も大人も子供もだれもが分け隔てなく集まることのできる場所を創る。
特に3つ目のコンセプトは運営法人の理念の最も根幹的なものであり、「ごちゃ混ぜ」という言葉を使って表現されている。
この「ごちゃ混ぜ」のコンセプトは多種多様な機能を並列的に配置した平面計画に表れている。
2015年4月に完成した1期計画では、法人の母体でもある既設の「行善寺」を取り囲むように温泉、食事処(蕎麦屋)、高齢者デイサービス、障がい者ショートステイ、生活介護などの機能を配置した。2期計画では、ウェルネス、住民自治室、保育園、内科クリニック、フラワーショップ、オフィスなどの機能を中庭を囲むように配置している。これらの機能全体が障がい者の就労支援の場となっていることも大きな特徴である。
これらの複数の異なる機能は互いにオープンな関係であり、明確な境界を持たずに隣接し、混ざり合っている。様々な人が様々な場所を行き交い、そこで交流が生まれている。
例えば、中庭では障害を持つ子もそうでない子も自由に遊びまわり、その様子をカフェでビールを飲みながら眺める人がいたり、子どもたちの声はオフィスやウェルネスにも届いてくる。住民自治室は地域住民が自由に利用できる場であるが、法人職員のフリーアドレスオフィスでもあり、日常的な交流が生まれている。温泉施設は地域住民に無料開放されており、隣接する食事処と合わせて、住民たちの憩いの場となっている。そこでは高齢者や障がい者から子どもまでが「ごちゃ混ぜ」の日常を楽しんでおり、賑やかな街のような風景が生まれている。
その賑わいは「交流人口」という数字にも表れている。2016年10月のグランドオープン以降、一か月あたりの交流人口は2万3千人を超えている。特筆すべき点は、そのうち約半数は福祉以外の目的で訪れているということである。温泉やウェルネスを中心にこの場所が地域の人々に利用され、地域の核となりつつあることを読み取ることができる。
さらに、敷地周辺には法人が持つ既設の障がい者グループホームや将来建設予定のサービス付き高齢者住宅を点在させる計画が進行中であり、地域全体での賑わいの創出を目指している。

この計画は人口減少化時代における地方創生の一つのモデルに成り得ると考えている。
近代においては明確なゾーニングによって合理的に建築も都市もつくられてきたが、人口減少・高齢化の進む地方都市においてはその手法は有効ではないと考えている。
都市部のように商業の力だけで街を盛り上げることは地方都市には困難であるし、特定の世代をターゲットにしたかつてのニュータウンのような街づくりは高齢化という問題に直面している。
地方都市において、ある特定の機能や世代の力だけでは現状を打開することは難しい。
また、我々はこの計画を通して、異なる機能や世代が交わる部分にこそ豊かさや楽しさ、賑わいが生まれることを学んできた。
複数の機能が隣接して混ざり合い、様々な人々がわけ隔てなく集うことのできる多様性を持った「ごちゃ混ぜ」の建築・街が失われつつある賑わいや豊かさを取り戻すための鍵になるのではないかと考えている。